ローカルサミットin倉敷おかやま

ローカルサミットin倉敷おかやまが11月3日~6日の間で開催されました。「ローカルサミット」は、場所文化フォーラム(任意団体)が、NPO法人ものづくり生命文明機構や各地の諸団体等と連携しつつ、全国の幅広い「志民」との連帯の中で、地域活性化の輪を拡げると共に、従来の人間中心の成長至上主義から自然との共生・循環に立脚した価値観への転換を共有しようと毎年全国各地で開催され、「志民」レベルでの連帯の輪の広がりと活動の連携が重層的かつ日常的に展開することで、ローカルから自然との共生・循環に立脚した価値観に基づく暮らし、持続可能な社会デザインが実現し、それをアジア等に発信していくことによって日本からの新たな文明観の構築が具体化していくことを目指しています。

ローカルサミット:http://localsummit.jp/

また、今回の倉敷での開催の底流には、約60年前の昭和29年に大原總一郎氏が提唱した「高梁川流域連盟」の思想が宿ります。その倉敷・おかやまに、多くの志民の皆様が集い、それぞれの実践を交歓し、「確かな未来」構築のための様々な可能性を模索しました。

岡山大学では、3日・4日のエクスカーション「里海再生・隔離施設・海上文化交流(日生・備前・瀬戸内)」コース、5日の第3分科会:流域・命を支える「風土・思想と環境・エネルギー・経済・金融」流域の地域特性・思想性を生かした地域経済の循環づくり、第4分科会:流域・命をつなぐ「地域包括医療ケア・インクルージョン・相互扶助」違いを認め受け入れ、相互に支え合い、安心できる社会づくり、第5分科会:流域・命を醸す「文化(芸術・スポーツ)・歴史と祈り・祭り」精神性を元にした地域の求心力・誇りとなる物語づくり、第8分科会:若者から流域への提言「流域未来「志」をつなぐ高校生・大学生会議」未来を担う若者たちの思いを込めた流域のビジョンづくり、そして最終6日の報告会に企画・運営協力いたしました(荒木勝理事・副学長以下、教員7名(医歯薬学研究科、保健学研究科、教育学研究科、地域総合研究センター)、職員3名、大学院生を含む学生10名の総勢20名体制で参加協力いたしました。第8分科会では、会場として岡山大学自然植物科学研究所をご利用いただきました)。また、シーガルスのメンバーを含むSPOC研究会も第5分科会を取り仕切りました。

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20161104ls13日~4日のエクスカーション「里海再生・隔離施設・海上文化交流(日生・備前・瀬戸内)」コースでは、まず備前市日生町漁協にて“アマモ場”再生活動の取組みについて、瀬戸内市裳掛地区では、空き家を再生した小さな拠点「あけぼのの家」にて、参加者と地域の皆さん、移住定住者の皆さん、裳掛地区で活動する大学生と交流会を開催、「風土」「里」「海」の新たな未来を考えました。「いこいの村」での懇親会には、武久顕也瀬戸内市長も参加されました。

4日は、国立療養所「長島愛生園」をお訪ねし、ハンセン病のために苦労された入所者の皆さんの療養生活をお聞きして、このような不幸なことが今後起こらないようにする取り組みと人権啓発活動について考えました。あわせて「第10回長島愛生園総合展(文化祭)」を拝見しました。見事な作品に感激でした。また、瀬戸内市牛窓では、海遊文化館にて江戸時代に西国の大名や朝鮮通信使が滞在した歴史を学び、そして白壁の土蔵、格子戸の家、明治以降の洋風建築、オリーブ園などを散策しました。オリーブ園の丘からは、錦海塩田跡地に建設中の東洋一のメガソーラー発電施設を見学いたしました。牛窓でのご案内役は布野浩子瀬戸内市議が担当されました。

また、5日は朝から倉敷市立美術館で全体会が開催されました。進行役は、ローカルサミット事務局長の吉澤保幸氏、開会挨拶は倉敷大会の実行委員長を務める岡山経済同友会地域振興委員長の梶谷俊介氏がつとめました。基調講演では伊東香織倉敷市長が「高梁川流域連盟から発展した新たなる連携」と題して気持ちのこもった地方創生に向けた方向を示しました。また、『里山資本主義』の著者である藻谷浩介氏(日本総合研究所調査部主席研究員)と井上恭介氏(NHKチーフ・ プロデューサー)による基調対談が行われました。続いて「流域思想による地方創生の意義と課題」と題して、中井徳太郎氏(環境省大臣官房審議官)、哲学者の内山節氏、大原謙一郎氏(前大原美術館館長)、大久保憲作氏(高梁川流域学校代表・クラシキ木材会長)が登壇、パネルディスカッションが行われました。会場の倉敷市立美術館は約250名の満員御礼でした。

午後からの第3分科会では、まず、倉敷市酒津で酒津榎窯を主催する武内立爾氏が70名を超える参加者を地域へ案内しました。倉敷では、先人の知恵により、高梁川の風土が育む豊富な水資源が、地域の環境に適した形で、農業利用はじめ地域社会を構成する人々の暮らしに恵みを与えてきました。そして地域経済を支えるエネルギーとして、今なお、脈々とその重要な役割を果たしています。この美しい自然環境の象徴として、また、水資源を活かして地域コミュニティを元気にする取り組みとして八ヶ郷用水沿いで日本有数の「ホタル観賞会」が開催されています。この「疎水百選」にも選ばれた近代を代表する建造物としての評価も高い「東西用水」水門をはじめ、歴史・文化に深い縁のある酒津周辺を見学・散策、そして「ホタル復活への取り組み」を武内さんから参加者に紹介、第3分科会のテーマの動機付けを行いました。分科会では、会場を旧原田邸にして、前半、岡山大学の三村聡センター長が山田方谷と大原孫三郎という二人の思想家が社会に与えた影響を、辻 信行氏(有限会社くま代表)が、倉敷が持つ歴史的遺産の良さを継承しつつ現代に蘇らせ人の生き方に新風を提起する取り組みを紹介しました。進行役は吉備国際大学社会科学部長の井勝久喜先生です。

後半は、①環境・エネルギーを視座においた「トヨタ基金活用による棚田再生プロジェクト」と題してNPO英田上山棚田団 理事の松原徹郎氏、②高梁川源流域における「全国の学生を鍛える森林ボランティア」活動と題して、一般社団法人 人杜守(ひとともり)代表理事の多賀 紀征氏、③瀬戸内の風土・環境を活かした「移住定住促進プロジェクト~岡山藩家老伊木氏のまち」と題して、瀬戸市裳掛(もかけ)地区コミュニティ会議 会長の服部 靖氏が、それぞれの地域における森里川海を活かした実践活動を紹介しました。

参加者から活発な質疑が、そして話題提供がなされました。大いなる地域力が持つエネルギーが地域社会を維持・発展する道筋が見えてきました。

その夜は、倉敷市美観地区のアイビースクエアにおいて懇親会が開催されました。ここまで、開催に向けて準備をしてきた関係者を中心に会場の熱気は最高潮となりました。

20161104ls4最終日となる6日は、朝から再び倉敷市立美術館で各分科会からの報告が行われました。学生からの報告として岡山大学学生サークル「まちづくり研究会」代表の三上大貴君が報告に立ちました。また、総括として岡山大学から荒木勝理事・副学長がコメントを行いました。

最後に、大会委員長の梶谷俊介氏が“倉敷宣言”を発表して無事に4日間のローカルサミットは閉幕しました。